残念な時帰呼が綴る 残念な感じのON>OFF生活


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おはようございます(^0_0^)♪

久方ぶりに 創作SSを 一本。

これは、ある友人の描いたイラストを元にしたお話です。

う~ん、ちょっと纏まりがないお話になってしまったけれど その友人の描いたイラストのイメージが このSSを読んだひとの頭のなかに浮かび上がったなら、成功かもしれません。

では、以下へ お進みくださいませ。

なお、文中のイメージなどは、全て 時帰呼の勝手な想像力の産物ですので、イラストを描いた友人の本来のイメージ及びコンセプトとは異なることを ご承知くださると幸いです。





【止まった時間】



森に 分け入ったのには 訳がある…。


いつものように、愛用のカメラ(時代遅れの銀塩カメラ)を持って、私は 出掛けた。

噂は、ずいぶん前から聞いていた。 森の奥の そのまた奥、今では 誰も踏み込むことのなくなった 苔むし 蔦の絡まる大木が生い茂り 陽の光も届かないほどの深い森。其処に眠る忘れ去られた文明の名残り。

其れを、どうにかして この目で見て、もうひとつの私の目にも焼き付けておきたいと思ったんだ。

フィルムは 沢山持った。 けれど、こんなに 探しだすのに苦労するとは 思わなかった。

だいたいからして、スカートを履いてきた時点で 私は、今回の撮影旅行を嘗めていたと 自分自身を呪わずにはいられなかった。しかも、お気に入りのワンピース。裾は 森の下生えに引っかけまくり ビリビリに破け 不意に降ってきた雨に塗れ泥まみれ…。いい加減、自分の愚かさに げんなりして 諦め 引き返そうかと思った時に 目の前に 其れを見つけた。

想像もつかない時間が流れたというのに 森の中に続く鉄路の跡、廻りに生い茂る木々が 何者かの通る事を邪魔するのを遠慮したかのように 其処だけは 一本も生えていなくて 細く長い空間が 何処までも延びていた。

その鉄路の跡を辿り歩くと 昔はびっしりと敷かれていたはずの砕石が足の下でジャリジャリと音を立て、目的地が近いことを知らせてくれているようだ。僅かながら 生えている草が足を捉えたけれど 其処に辿り着くまでに通ってきた森の中と思えば どうということもない。

期待に胸膨らませて 暫く行くと 真っ暗なトンネルが行く手の山腹に現れた。 真っ暗な中を抜け 光の中に踏み込む。トンネルを抜けた先にも深い森が拡がっていた。




頭上から降り注ぐ木漏れ日。静寂に満ちた世界。止まった時間。

其処に 私が、恋い焦がれ探し求めたアイツの黒々とした巨体が姿を現した。



軸配置(ホワイト式) 4-6-4
(アメリカ式) ハドソン
(日本式) 2c2

軌間 1,067㎜

動輪径 1,750㎜

全長 21,475㎜

全高 3,980㎜

総重量 88.83t

最高速度 129㎞

その当時の狭道としては 世界最高速で駆けていた 緑一色の森の中に佇む、C62蒸気機関車。1948年からの二年間に 49両が製造された疾走する鉄の塊。 それが、今では 打ち捨てられ 顧みられることもなく 永遠の眠りに着いている。

そう、二度と彼は走る事はない。
何故なら 長い年月の内に 驚くべき変化が彼の身に起こっていたからだ。

見上げる程の蒸気機関車の巨体の上に 私の太股よりも太い根を何本も張り 蒸気機関車の車体の大半を占めるボイラーと同じくらいの太さの巨木が真っ黒な車体を踏みしめるように育っていたからだ。

なんで、こんな所に…

只々、唖然として見上げるしか出来ない。 どうして、こうなった!?

自然と口をついて出た問い掛けに答える者など この森の中に居るはずもない。 けれど、疑問への解を問わずにはいられなかった。

かつて 人の手により作られし蒸気機関車が再び走り出し この森を抜け出すのを まるで押し留めようとするかのように育った巨木の幹は ゴツゴツとした大きなコブと分厚い樹皮、そしてその上には翠の苔が覆っている。

廻りに生えている森の木々よりも ひときわ高くそびえる巨木の幹の太さを見ると どう考えても樹齢は数百年…。

…と言うことは、もしかしたら この巨木が 果てしなく拡がる森の最初の一本だったのかもしれない。

そう、貴婦人とも呼ばれたC62という名の蒸気機関車が 走ることを禁じられ 打ち捨てられてから 既に数百年以上の時が流れているのだから…。

ざわり ざわりと森の木々の梢が風に揺れる。 何処からともなく小鳥の囀ずり。

あり得ぬ光景が 目の前にあった。

私は、夢中で駆け寄り その鐵の車体に手を置いた。 勿論 その車体内部に燃えた火が落とされてから 長い年月が経ち 既に冷えきった筈だったのだが、どうした訳か 仄かな温もりが残っているかのように感じられるのは 何故なのだろう?

見上げると 巨木の折り重なる太い枝に生い茂る葉の間から キラキラと煌めく陽光が見える。 もしかしたら、この巨木が集めた日光が 蒸気機関車に温もりを伝えているのかもしれない… なんて事を考えてしまった。

私は、蒸気機関車の車体によじ登ったり 遠間から夢中になって ひとしきり この不思議な光景を カメラに納めると
満足の吐息を漏らし あらためて彼の黒い巨体を眺めた。

もう、二度と走り出すことの無い彼。

だけど、彼は死んだ訳ではない。 彼は、此処に 種子という命を運び、森を育み、今も見守り続けているのだろう。

文明が 破壊した自然が この星に 満ち溢れる その時が来るのを。

「ふふふ…」

私は、小さく笑い声を洩らした。

そうね、これは 私の夢…


もう、滅んでしまった…私たち人間たちの紡いだ夢の残照…


今も、さ迷い続ける… 私の魂が望む夢なのかもしれない。


私は、そんな風に 考えながら、森を抜け出し、荒廃した【外の世界】へと戻っていった。


振りかえると、何処か遠くで 警笛が

細く甲高く 鳴ったような気がした。




【止まった時間】……… 了
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