残念な時帰呼が綴る 残念な感じのON>OFF生活


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こんばんわ(^0_0^)

超絶ブログ更新サボり魔の時帰呼です。

本日は 久方ぶりに 短い文章を書いたので アップしてみます。

内容は、少年エレフと老詩人の奇妙なふたり旅の一幕… 極他愛のないお話しでございます。

宜しければ 以下へ お進みくださいませ。






【鳥のように 風のように / 雲雀】


ほっほっほ …と 老人は笑う。

其の声は、秋も深まった底抜けの青空に 染み渡るように消えてゆく…。

(う~ん、上を向いてるのに 底抜けとは なんとも間抜けな表現だな)

エレフは、くるりと首を廻すと 数歩後ろを歩く白髪で白髭の老人の顔を 本人に気取られぬように窺った。

「なんじゃ?」

途端に 老人は、何が そんなに面白いのか 満面の笑みを浮かべ問い掛ける。

「いや…、なんでもないよ」


ぴーひょろろろ~♪

晴れ上がった青空高く 一羽の鳥が
甲高い声で 詩を歌っている。

「雲雀じゃな…」

聞きもしないのに 老人、則ち 旅の詩人ミュロスが 答える。

(自分の都合の悪いことには 聞こえない振りをするくせに…)

「何か言ったかの?」

老人が 暖かな陽射しに 白銀のように光る髭を撫でながら柔らかに問い掛ける。

「いや…、良い天気だねって言ったんだ」

「うむ、そうさの… 此ほどの晴天は久しぶりじゃ。疲れた老体への神の思し召しかもしれぬの…ホッホッ♪」

時折、老人ミュロスは まるで少年のような目をする時がある。 いつもは、哀しげな眼差して 空や森や海を見つめ ひび割れた声で即興の詩、或は 遠い過去から歌い継がれた叙事詩を語る 年老いた流浪の吟遊詩人だというのに…。

「のう、エレフや…、あれが何を歌っているのか知っておるかの?」

老人の指し示す先には 雲雀が 天空に輪を描きながら 細く甲高い声で鳴いていた。

「さぁ…? 腹でも空いたと言ってんじゃないの?」

「そりゃ、お前のことじゃろ?」

そう老人が言った途端に 腹が 大きく鳴き、恥ずかしさに顔を赤らめながらエレフは言い返した。

「仕方ないだろ?食うや喰わずの貧乏旅行なんだから」

「いんや、エレフ。それは違うぞぃ」

老人が さもがっかりしたような顔をして そっと反論する。

「そもそも、この道行きは旅行なんかではない。わしらふたりは この天空を屋根とし 何処までも続く大地を寝床として暮らしておるんじゃ。」

(また、訳のわからない講釈が始まった…)

エレフが ゲンナリした顔を見せると 老人は 肩をすくめ 心底 不精の弟子に落胆した体を示した。

エレフは そんな老人を見ると 少しばかりの苛つきを感じると同時に 師の考えに沿えない自分自身への奇妙な感情を覚えた。

「そりゃまぁ、奴隷小屋に居た時に比べりゃ 今は天国に居るような暮らしぶりだけどね」

もっとも、このままでは 文字通り天国行きになりそうなほど空腹だとは 意地でも言わないエレフだ。

「さにあらん、さにあらん、自由とは何事にも換えがたい宝じゃ…」

老人の目は 天空を舞う雲雀から離れない。

「……うん」

エレフもまた、青空に輪を描く雲雀から目が離せない。

(あぁ…、あの雲雀のように 翼があれば 天を飛び廻り愛しい半身を捜すのに… )

煌めく陽光が目に入り エレフは思わず瞼を閉じると 一筋の涙が溢れた。


「何か 感じるものがあったかの?」

老人の声に エレフは反論する。

「あのさ、こんな時 見て見ぬ振りをしようって大人の判断は無いのかい?」

老人が 重ねて反論する。

「わしは、大人を通り越して ショボくれた老い先短い老人になのじゃぞ。言いたい事を 言いたい時に言わずしてなんとする? それに 心のうちに秘めた思いに打ち沈む若者に 助言するのは 人生の先達である老人の役割でもあるのだからな… なに、臆することはない、 このわしに なんなりと打ち明けてみるがよい…。 もっとも金の無心なら お前も知っておろうが 全くの無駄だから そこのところは心得ていてもらわねばならん…。 ささ、なんなりと申してみよ♪ 」

この老人と話していると どのような心配事だろうと 不思議と いつかなんとかなる些細な問題のように思えてくるのは何故なのだろうかと エレフは不思議に思えてきた。 たぶん、この無邪気な子供のような老人の 澄んだ青い空のような瞳の色が そう思わせるのだろう。

「お師匠に話したところで 仕方ないさ…」

それでも、エレフは 未だ老人に 生き別れのミーシャの事を はっきりとは話せずにいた。 なにより、あの嵐の海に投げ出された幼い妹の無事を 常識人の尺度で計り 否定的な意見を言われるのが怖かったのだ。


「雲雀はな…」

先程から 空に輪を描く鳥の小さな陰を見上げ続けていた老人が 言葉を継いだ。

「あれ、あのように 天空を舞い 必死に歌い続けておる。 ピーひょろろ…と いかにも頼りなげな声でな…」

言われてみれば エレフの耳にも その声が 寂しげに聞こえてくる。

「もしかして、だれかを探しているのかな?」

エレフの耳には 雲雀の声が 妹を探す 自分の心の中の声と同じように思えてきた。

「そう、思うか? エレフよ…。 だがな、あれは そんな意味の歌じゃないぞえ。」

(じゃあ、なんだって言うんだ?)

「あれはな、あの雲雀の輪を描いて飛ぶ下にある自分の巣を 他の雲雀から守るために 必死に縄張りを主張しているんじゃ 」

「ふーん…」

エレフは この老人の言わんとする事が なんなのか さっぱり分からなくて 気の無い返事を返すことしか出来なかった。

「まっこと、虚しく愚かな行いじゃ。 ああすれば 自分の小さな幸せの王国を守れると思っているのだからな。
だが実際は、其れが 足下の自分の巣の在りかを 天下に知らしめている事にも 守るべき王国に忍び寄る蛇の存在が居る事にも気付いておらんのじゃ。
そればかりか鷹や鷲のような獰猛な猛禽に我が身を晒して もともと必要の無い危険を引き寄せていることに思いが至っておらぬ…」

天を舞う雲雀の声が 高く高く響いている。

「 人は 元来 腹一杯 馳走を食べたとしても満足せぬ生き物じゃ」

老人は 静かに語った。

「だからこそ 他国を攻め 自分の領土を拡げようとする。そうすることが外敵を滅ぼし 永遠の富と平和を 自分の王国にもたらすと信じておるのじゃ。
しかし 同時にその欲望が 他者からも自分に向けられている事を知っておるからこそ 恐れおののき、あれ あの雲雀のように必死で愚かな歌を唄い続けなければならぬ運命を 己に背負わせているのだ 」

老人は 珍しく真面目な表情を見せ、苦々しげに 痛烈な言葉を吐いた。
だが、先程までの 飄々とした様子に陰りを見せたのは ほんの一瞬、
エレフが 老人の意外な口調に驚き 瞬きをした間に またもとの剽軽な老人の顔を取り戻し エレフの瞳を覗き込んでいた。

「どうした?エレフ、 ちと難しすぎたかな?」

どうしたかと聞きたいのは こちらの方だ…。 そう言い返したいと思った時には 既に老人の視線は またもや天空に舞う雲雀の姿に戻り ホッホッホッと いつもの気楽な笑いを放ちながら 数歩先に歩み去っていた。 なんとも掴み所の無い 人を食った老人だ。


青い空は 何処までも続き 幾つもの白い雲が風に吹かれ 見る間に流れ去ってゆく。

不意に、老人の背に 幻の羽根が ふわりと現れ ゆっくりと羽ばたいたかと思うと その姿が エレフの背後から吹き抜ける風にかき消されてしまった…

…ような気がした。

「師匠…!」

「なんじゃ?」

呼び掛けに応え 老人が少年のような瞳で顔を振り向かせる。

「…やっ、なんでも」

エレフは 言い知れぬ不安に囚われ 老人の背を追い、駆け寄ろうとした自分に驚きながらも 差し延ばしかけた掌を握り締め 胸に当て言葉を濁した。

「なんでもないです…」

まさか、この老人が何処かに行ってしまい 二度と還らぬように思えたなどと エレフは 言えなかった。

「ふむ、お前が 何を求めているのかは知らぬがな、大切なモノを求めるならば 例え 人からなんと言われようと 精一杯 抗い、 けして諦めてはならん。それが、どんなに他人から愚かな行いと見えたとしても…な?」

エレフは、ますます、この老人の言うことが分からなくなり混乱した。 さっき 雲雀の姿に 愚かな行いと言ったのは この老人の筈だ。

そこまで聞いても 老人の話すことの半分も エレフには理解できなかったが 老人が 彼の絶望的な旅を なんとか励まそうとしていることだけは理解できた。

「よく分からないけど… ありが…」

「うん?」

言いかけたエレフの言葉に 老人が聞き返すと エレフは、言いかけた言葉を飲み込んだ。


「うむ、…」

老人は にっこりと笑い、再び歩みだした。 ゆっくりと ゆっくりと…。

エレフは、その背を追い ゆっくりと歩を進める。

少なくとも この老人の背に見えたのは 死に近づく者の背に浮かび上がる黒き影ではない…。 それが、エレフにとって何物にも代えがたい安堵を感じさせた。

老人と少年、不釣り合いなふたりが 宛もなく歩み続ける大地の上に、何処までも青く済みきった空が広がり 天高く 雲雀が鳴いていた…



ぴーひょろろろ~♪…… と、




【鳥のように 風のように / 雲雀】…… 了
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