残念な時帰呼が綴る 残念な感じのON>OFF生活


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おはようございます(^0_0^)

結局 昨夜も寝落ちして 今朝から続きを書いていたら もう出勤時間に!!

取り急ぎ アップしておきます。
すみません;;;







【片見月】


天空に懸かる月


いつのまにか、 吹き寄せる風は 季節と供に身震いするほどに冷たい物となっていた。


何処からか 煌く星光のような竪琴の音色と、朗々と詩を吟ずる月光のように透き通った歌声が漂い聞こえてくる。

どうやら、オルフは 今宵も寝付けぬようだ。


そういう自分もまた、同じく ここ幾夜か まんじりとも出来ぬ夜をすごしていたのだが…。


斥候の報告によれば 件の内通者との渡りは既に付き、攻撃に先だって潜入している兵により 我が奴隷軍の総攻撃と同時に 城門は内側から開かれる手筈になっている。

何も心配する事など有りはしない。

そう、此度の戦に於いて 今までにも増して夥しい数の死者が 双方の軍に出ることさえ除けば… いつも通りの戦にしか過ぎないのだ。


オルフは、言う。

「この難攻不落と謳われるイーリオン城塞を落とせば 我が軍の…、 いや! 閣下の恩名は天下に轟き、我が軍の侵攻を止めようとするモノなど 皆無となるでしょう!!」 ……と、


だが、本当に そうだろうか?

繰り返される 戦の日々が生んだのは 真に自由となる日を夢見て その命を捧げる勇猛果敢な兵達の無残な死と 未来永劫 消え去る事の無い憎しみの連鎖にしか過ぎなかったのではないのか?


私には 分かっていたのだ…。
この戦いの逝きつく先が 何処に有るのかを…

それでも、私は 引き返すことも、立ち止まる事さえ出来なかった。

其れこそが、憎しみに身を焦がし、人間としての最も大切なモノを 最後の一片まで燃やし尽くしてしまった者の背負うべき業と言えよう。



仰ぎ見れば、暗い夜空に流れ来る薄雲が 傘を被った月を覆い 朧に霞んでいる。


(ほっほっほっ、どうやら、明日は天候が崩れるようじゃのう)

遠い昔に別れた筈の老人の声が、風に乗り 聞こえて来たような気がした…。


あの夜 風に吹かれながら 鬱々と物思いに沈み見上げた月も 今宵と同じく朧に霞み、 何処か この世とあの世の境が 曖昧に感じられたことを覚えている。

エレフ、ミーシャ、オリオン この三人が イーリオン脱出後に ひょんな事から乗った海賊船(トパーゾス号)が海の底に沈み、たった独り 浜辺に打ち上げられたエレフを助けてくれた この風変りな旅の老詩人ミュロスとの二人旅は 既に 足かけ三年に及び、その間 エレフは 立ち寄る町や村や港で 懸命に この世にたった一人の肉親… いや この世に生れて来た時に分かたれた半身を探し求めていた。 けれども その行方は一向に知れず、無為に時間ばかりが過ぎ去ってゆくような気がして 焦燥感が募ってゆくばかりだった。

 あれ程の大嵐にも拘らず 自分は生き残り、此処にこうして この苛酷な世界を放浪し続けている。

これは、神の与え賜うた恩寵なのか… それとも 残酷なる罰なのか?

確かに 俺は人を殺してしまった。 そう、あの難攻不落の城塞イーリオンから脱出する時に たった一人の妹を救いだすために 仕方なく…(本当にそうなのか?)殺してしまった…(己の怒りに任せての凶行ではなく?)今となっては もうどうでもよいことだ。 だが、俺の犯した罪に対する罰ならば この身で総て受け入れよう…。 地獄に落ちるというならば この命をもって償おう…。

だから、 …だから、せめて… もう一度…  ああ、ミーシャ…


轟っ…!と 突然の強風が 辺り一面の芦原を薙倒すように吹き抜けて行き エレフの体温を一気に奪い去ってしまった。
   
エレフは 凍えた指で自分自身の両肩を抱きしめる。 こうすると はるか昔 妹を抱きしめた感触が甦り、少しだけ温もりを取り戻せるような気がした。


少し離れたところで 黙ってエレフと同じように月を見上げていたミュロスが ぶるると身震いして クシュン!と大きなくしゃみをすると言った。

「エレフや…、いつまでそうしている心算じゃ? 風をひいてしまうぞい」

「すいません、師匠…」

ゆっくりと歩み寄り 傍らに立ったミュロスが そっと手を伸ばし、エレフの頭に 年老い皺枯れた手を置いた。 その手は エレフに付き合って永い間 立ち尽くしていたために すっかり冷え切っていたが 何故だか温かみを感じられた。


「知っておるか? 今宵の月を 何と呼ぶのか…」

唐突な師匠の質問に 戸惑いながら 小さく首を振ると ミュロスは ニッコリと笑顔を浮かべた。

「十三夜と言ってな、後の月見とも言う…。 どうじゃ、見事な月であろうが!」

そう言って 指し示した先には 僅かに欠けてはいるが 殆ど真ん丸に近い大きな月が ぽっかりと浮かび、叢雲は 折からの強風に すっかり吹き払われ 先程まで 傘を被っていたとは思えぬほど 煌々と光りが降り注ぎ 師匠とエレフのふたつの黒い影を 地面に刻みつけていた。

「月は 月だろう? 何か違いが在るのかい…? 師匠」

「たしかにな…、月は いつでも変わらず ただの月じゃ…。 だがな、それを見る人間の心は まるで あの月のように時とともに移り変わってゆくものじゃ。だから、同じ月を見ても 人は それに意味を求め 心を悩ます」

「何を言ってるのか チンプンカンプンだぜ」

エレフが そう言うと ミュロスは、ほっほっほっと ひとしきり笑い もう一度 頭をくしゃくしゃと撫でた。

「うむ、儂にも さっぱりじゃ」

時々 この爺さん、大丈夫なのかな?と エレフは思う時がある。 だが、こうしていると 遥か昔に失ってしまった 人の温もりを思い出させてくれるのも事実だ。 もっとも寒さのせいで盛大に垂らした鼻汁をたっぷりと付けた手で 頭を撫でるのは勘弁して欲しかったが。

「では エレフ、 十五夜は 知っておるじゃろう?」

「いいや、知らない」

「まったく、詩人の弟子じゃと言うに 風流という物を解さないとは困ったものじゃ」

ミュロスが 口をへの字に曲げて 溜息を吐く。

(弟子になった覚えなど無いのにな…)エレフは ぼそりと呟いた。

「何か言ったかいのう? エレフや… まァ、良い。 いいか? 十五夜というのはな…」

「十三夜の話じゃなかったのかい?」

「人の話の腰を折るんじゃない! 黙って聞きなさい」

こうなると、この爺さんの話は長いんだ…。 今度は エレフが大きく肩を竦め溜息を吐く番だった。

「十五夜というのは、月が死の影に沈み朔となり姿を消し やがて徐々に黄泉の国から甦るかのように丸く光りを取り戻し望となる。 この朔から望への日数が およそ十五日間。 すなわち 十五夜とは ほぼ満月と同義語者と言って良いじゃろうな。 古来 人は、 一度 死に、再び甦る月を 特別な存在とし

て見て来た。じゃから、月の無い夜は 鬱々と沈み。 満月を見ては 慶んだものじゃ。 じゃというに、エレフ この見事な月を見て 何を落ち込んでいるのじゃ? 失ったモノは 探せば良いんじゃ。探しても見つからなくとも それでも探し続けていれば それがけして無駄になる事は無い」

「けど…、師匠…!」

満月の光りを浴びて ミュロスの白髪だらけの髭面が 銀色に見える。 ミュロスは ゆっくりと首を振り 優しく言った。

「諦めるでない。 何処に居ようと この中天に架かる月は 唯一つ。 きっと 何処かで お前の捜し求める大切な者も この同じ月を見ているじゃろう。 たとえ闇に沈んだ夜でも 諦めずにいさえすれば いつか こうして光り輝く真ん丸な月を 闇の中に見出す事が出来る。 儂は そう信じておるんじゃ…」

以前より この不思議で胡散臭い爺さんが 何故 雨に打たれ、風に吹かれながらも、苛酷な旅を続けるのか 疑問に思っていたのだが、もしかしたら この人も 何か大切なモノを探して旅を続けているのかもしれないと エレフは思った。

「で、何の話じゃったかな?」

「十五夜の…、いや 十三夜の話だった筈だよ 師匠」

少し感心して聞いていると この爺さんはいつも この調子だ。

「そうそう、十三夜というのはな。 八月の十五夜から ひと月ほど後の月のことでな、この日もまた 少し欠けておるが見事な月が見られる夜なのじゃ。 

古来、遥か東方の国では 十五夜と十三夜 この二つの月を愛でる風習があってな、片方だけを見て もう片方を見ない事を『片見月』といって無粋なものとされておる。 だが、儂はな これは風流とか無粋とは関係なく どんなに辛く厳しい現実でも 諦めずに頑張ったモノには 月の女神が美しい姿を見せ 祝福し 励ましてくれておるのじゃと思っておる。 そして 儂達も 再び月の女神アルテミスの御姿を見るために 精一杯生き抜かねばならん。 女神が 戦わぬ者に 微笑む事など けして無いのだからな…」

「また その台詞かい? それに 其れは月の女神じゃなくって、運命の女神の話だったんじゃないのかな?」

「黙らっしゃい! 話の腰を折るんじゃないと…、それに…」

もう一度 エレフが肩を竦めると言った。

「女神は 女神じゃ! 何の違いがある… だろ?」

「いやいや、儂は そんな罰当たりな…  へ・へ・へっくしょい!」

そこまで言いかけて ミュロスが またもや大きなくしゃみをしたから、ふたりは お互いの顔を見合わせて大笑いをした。 この寒空に長話しをしていたものだから すっかりと身体が冷え切ってしまったらしい。

「さて、さて、いつまでも こうしていては本当に風邪をひいてしまう。 先を急ごうかの… エレフ」

そう言った老詩人は、真面目な顔をしていれば 其れなりに威厳のある顔をしているというのに 長年の旅の所為で風雨に曝された髭に垂れた鼻水がバリバリに乾き 其れを見ていたエレフは 思わず笑いが込上げてきてしまった。

「まったく、ひとが真面目な話をしているというのに、エレフ お前には 詩人の弟子としての真剣さが足りんぞい」

「さぁ、話なら 今夜の宿を見つけてから ゆっくりと聞くよ。 それにしても 本当にこの先に宿があるのかい師匠?」

「はてさて、儂が そんな事をいったかの? 先に立って どんどん道を急ぐから お前が知っていると思ったのじゃが…。 仕方がない、今夜は儂が詩人としての心得を とっくりと聞かせてやるから 明日の朝まで 寝ずに歩こうかの」

「ええぇ~~!?」

驚いて そう声を上げると 老詩人が言った。

「なぁ~に、天も地も わが家 我が宿 星空の天蓋 草はらの海原を行く二艘の船。 そう思えば どうということも無い。 是こそ 王侯貴族も味わえぬ 真の贅沢という物じゃて… ホッホッホッ! 見ろ エレフ あの星空を。 明日は良いてんきになるじゃろうて!」

お気楽な老詩人の笑い声が 天高く吸い込まれてゆく先を見上げると 満天の星空が広がっている。

(さっきは、天気が崩れると言っていたのに… な)

そう思ったエレフの顔には 先程の曇りは 最早 微塵も残っていなかった。



「如何なさいましたか? 閣下!」

その声に我に返った 物思いに耽っていたエレフが顔を上げると、そこには 先程まで月下で奏でていた竪琴を手にした奴隷軍参謀オルフの紅潮した顔があった。 この者も 最初に出逢った頃には 細腕に握った剣に振りまわされるような 女性と間違われるほどの華奢な体躯の持ち主だった。 だが今や 勇名を馳せる狼将シリウスと並び称される 無数の傷を身体に刻み込まれた歴戦の戦士となっていた。 


「いや、すまん…。 是より 明日の戦の最終通達を行う。 各部隊の隊長を ただちにこの本陣に召集してくれ」

「はっ!」 

命令を受け びしりと背筋を伸ばし敬礼をすると 踵を返し立ち去りかけたオルフだったが 急に振り返り言った。

「何を ニヤついているんですか、閣下?」



「そう言えば お前も詩人だったな…と 思い出してな…」

「はぁ、所謂 旅の吟遊詩人という奴でしたが… それが何か?」


「いや、何でも無い。 早く行け」

そう言って エレフが手を振ると 唐突な質問に オルフは怪訝な顔をしながら、急いで伝令の為に陣幕を後にした。


 (変われば変わるモノだな 人間というモノは…)


こうして 小高い丘の上の風に波打つ草はらに立ち、満天の星空を見上げると あの頃と少しも変わっていないような気がしたが、眼下に広がる真っ暗な闇の中に浮かぶ野営地の所々に浮かぶ篝火と その間に揺れる 紫眼にしか写らない青白い命の焔を見下ろしていると 其処に 束の間の安息を貪る死すべき者達の命の温もりを掌の上に感じられるような気がした。

(ソウダ、儚ク美シイモノダロウ? 己ノ運命モ知ラヌ哀レナル人間ノ命ノ焔ハ…)

耳元で 忌まわしきモノの囁きが聞こえたが、エレフは それには耳を傾けようとはせずに 黒き剣を取り一歩踏み出すと、澄みきった星空のような紫眼を閉じた。

それでも そのモノの声は 執拗に囁き続けたが 彼等死すべき者達の命の焔が 瞼の裏から消え去る事は無く 赤々と燃え続けていた。


     

【片見月】  ……了



   
  


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 コメント
この記事へのコメント
お師匠の「諦めさえしなければ…」 の言葉、深遠な言葉に感動です!!←だって゜マ~プル。さんの思考と極似なんですもの!

で、前後のお話もッ!鼻水でカピカピの描写! 深いお話の中に笑えるお話も入れ、なおかつ気温、寒さが伝わって来ましたよ!


感動のあまり、拍手しかできませんでしたよ!?
なんてコメ入れて良いのかなッて……

2011/05/26(木) 01:46 | URL | ゜マ~プル。 #-[ 編集]
>゜マ~プル。さんへ

お師匠さん 良いですよねww

私は、じまんぐさんキャラは みんな好きなんですよ。
中でも 私の一番のお気に入りキャラは ミュロスさんです。 【路傍に咲く花】の中でも少しだけ触れていますが 私の妄想設定では ミュロスさんは 剣の達人だという事になっています。 もっとも、ある事件が原因で 剣の道に生きるのを止めてしまったのですが。 それ以降の彼は みなさん御存じの あのとぼけた爺さんキャラになってしまったという…www

ミラの二次創作を書いていると どうしても暗い話が多くなってしまう時帰呼なんですが 本編の中では描かれていないけれども、少しでもキャラ達に幸せな時間を過ごした時期が有ったのではないかという妄想を元に これからも ほのぼのとしたシーンを織り込んで行けたら良いなと思っています。

いつもいつも、コメント&拍手をありがとうございます。

゜マ~プル。三のブログも 楽しく読ませて頂いております。 
2011/05/27(金) 10:44 | URL | 時帰呼 #-[ 編集]
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