残念な時帰呼が綴る 残念な感じのON>OFF生活


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こんにちわ(^0_0^)

仕事の関係で 4連休中の時帰呼です。 本日アップするのは 第五の地平線『ROMAN』より 黄昏の賢者を元にしたSS です。

これは 『Marchen』発売前に書きかけていたSSを 今回 頑張って書き上げた物です。 『ROMAN』に関しては 私の中で まだまだ解釈が定まっていないのですが、今 私の中に在るイメージで書いてみました。

アレク→レオンSSも 書きかけなんですが 先日も書いたとおり 私は作品に関しては移り気なもので 其れに その時閃いた勢いで書き上げないと 書きかけ作品が増える一方なんですよね;;;

という訳で 普通の方々とは まったく解釈が違うとお叱りを受けるかもしれませんが これもまた ひとつの浪漫という事で… 宜しければ 以下へお進み下さいませ。







【黄昏と宵闇の狭間】


「ようこそ! 光と闇の狭間 緋色に彩られし黄昏の世界へ! おやおや、どうしました?  ああ なるほど! それは、残念でしたねぇ。お嬢さんの お目当ての御方は 随分以前に此処から立ち去って仕舞いました。 いやいや そんな顔をするものじゃありません。 だってそうじゃありませんか? 長い間 この闇の底に繋ぎ留めていた枷から 彼は、漸く解き放たれ、光り溢れる世界へと旅立ったのですから… これは 慶ぶ可き事なのではないでしょうか? あああ お待ちなさい お嬢さん 折角 このような処まで足を運んで下さったのだから…、 どうだろう? 愚かな提案があるのだが、私で善ければ 君の話し相手になりたい!」


そう言って その男は 深々と頭を垂れると、私を 彼の背後に広がる闇の中へと 手招いた。


******


先程まで夕日に照らし出され燃えるような緋色に染まっていた薄雲は 見る間に暗い赤銅色に色を変え、深い紫色の闇のヴェールが 辺りに漂い始めていた。


少女がひとり、そんな事に気付きもしないで 人気の無い公園の真ん中に在る噴水の廻りを、喪心しきった面持ちで、先程から幾度も 幾度も巡り歩いている。

春先とはいえ、冬の残滓が残る凍える夜が すぐそこに迫っていると言うのに 彼女が羽織っているのは 擦り切れた薄いコートが一枚だけ、そのたった一枚きりのコートの襟を掻き合わせ 少女は「ほうぅっ…」と 息を吐いた。 吹き寄せる風は身を切るほどに冷たく 襟もとの手の指は 皸(あかぎれ)に腫れあがり 所々が切れ赤い血が滲んでいたが 少女の眼は 此処に在らずといったように宙を泳いだ。

 コツリッ…

石畳を叩く乾いた音に 少女が振り向くと、噴水を囲む冬枯れの花壇の前に据えられたベンチに ステッキを手にした男が一人座っていた。

男は 少女が自分に気付く事を待っていたかのように ボロボロの山高帽のつばの下の唇を歪め(…ニヤリと笑ったのか?)ぼそりと呟いた。 その声は ほんの小さなものだったが 肌を刺す北風の中でも はっきりと聞き取れた。

「どうしたのかな? お嬢さん そんな浮かない顔で… 何か悩み事があるようだね。 どうだろう 一つ提案があるのだが、君が望むならば… 君の話し相手になりたい…」

少女は まるで突然現れたかのような不審な男に 一瞬警戒の眼を向けたが、良く考えれば 深く心の内の世界に沈み込んでいた自分が気付かなかっただけなのだろうと思い直した。 男は 物静かにベンチに腰掛けたまま こちらを見ている。 その眼差しは 迫り来る夕闇の藍色と 僅かに残った夕陽の緋色を反射して まるで漆黒の宝石のように見えた。

いったい何歳くらいの人なのだろう? 年老いた老人のような佇まいにも拘らず そのキラキラと輝く双眸は年若い青年のようにも見える。

男は 今度は間違えようも無い暖かな笑みを浮かべて言った。

「これは、少しばかり おせっかいが過ぎたようだね 失礼した。 私は退散するとしよう…」

「あっ…、ごめんなさい 私…」

立ち去りかけた男が振り返り 小首を傾げ 次の言葉を待つ…

「少し… 話を聞いて頂けますか…」

少女の言葉に 再度ベンチに腰を下ろした男は 大きく空けた自分の隣をポンポンと軽く叩いて砂埃を払い 座るように即した。

「失礼、レディーファーストとかは 慣れてないんだ…」

それでも、そんな風に 丁重に女性として扱われた事の無い少女は頬を赤らめ なんだかフワフワした気分になって 男の隣にそっと座った。

「…とはいえ、あまり聞き上手な方では無くてね」

そう言った男が ステッキに両手を置いて あどけないと言ってもよいほど邪気のない笑顔で自分を見つめている。 話を聞くと言っておいて 其れは無いんじゃないのかな?っと思ってクスリと笑うと 男もクスリと笑って言った。

「やっと 笑ってくれたね」

ああ、この人の笑顔… 素敵だわ。 少女は ぽつりぽつりと自分の身の上を この初めて会った男に語り出した自分でも不思議に思いながらも、一度口を開いた事で 今まで溜め込んでいた思いが次々と溢れ出てくる。 其れは 生まれて来たことへの疑問。 なぜこれほどに辛く苦しく孤独なのか…。 還らぬ人への想い。 そして埋まれ来る仔への畏れ。 まだ見ぬ未来への不安。
  
「成るほど…[En Effet(アン エフェ)]―― 、 逝くべきか 逝かざるべきか 其れが 君の 謂わば問題なのだね…」

こくりと頷きながら 少女は 話してしまった事に 少し後悔しだしていた。 何故なら 男の笑顔は 先程と少しも変わらなかったが 漆黒の宝石に見えた男の瞳が 妖しく光りを変え ゆらゆらと揺れていたから。

「君が望むなら 其れもよいだろう… けれど 生まれる前に死んでゆく焔が君の中に宿っているのが 私には見える。 其れは 儚く弱々しい焔だが 確かに自分自身の意思で燃えているんだ…」

そんな事は 分かっている。 今 この瞬間でも このお腹の中の命が懸命に手足を動かし、精一杯自分の存在を主張しているのを感じられるのだから。 けれど、こんなに辛い現実の中に産み落とされて この仔は 本当に幸せなのだろうか?

「確かに この世は 苛酷な物語で埋め尽くされている。 だが、其れは 君が決める事ではないよ」

心の内を 見透かしたように 男は語る。 

「そうだな、どうだろう? 私にひとつ提案があるのだが…。 今から 私が見て来た幾つかの物語を君に聞かせよう。 君が君自身の本当に望む答えを導き出せるように」

辺りはすっかりと夜の帳に閉ざされ、空気が凍りつくように冷え切っていたが そんな事は 少女には もう少しも苦にならなくなっていた。 噴水の音と風の音、語りかける男の声。 人影の絶えた 町はずれの公園のベンチ。 澄みきった空に瞬く無数の星明かりと真ん丸の月明り。

「さぁ、聞いておくれ お嬢さん[Mademoiselle(マドモワゼル)]… これは ハジマリも無く オワリも無い 廻り廻る輪廻の物語、儚く愛しい焔達の物語[ROMAN(ロマン)]を……」   

その時 少女は 気付いた。 夜空を見上げる 公園の所々に灯ったガス灯の光に照らし出された 初めは 老紳士かとも思えた男の顔は いつの間にか瑞々しい少年のように変わり、右の瞳は藍色 左の瞳は緋色に輝く宝石のようにキラキラと輝いていることに…。




  ―― これもまた [Un enfant de l'hiver(冬の仔)]が生れるに至る もうひとつの浪漫 ――
 
      

   
 
【黄昏と宵闇の狭間】  …… 了
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