残念な時帰呼が綴る 残念な感じのON>OFF生活


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おはようございます(^0_0^)

最近 寝落ちが激し過ぎる上に 思ったように文章が描けないという二重苦を味わっている時帰呼です。

本日は 先日アップした【蒼き月 金色の竪琴】の第五夜【境界】その2をお送りいたします。 とは言え、まだこのお話しは終わりません。 ごめんなさい;;;

これまでのあらすじとしては 風の都イーリオンでの最終決戦後に起こった異変の中 姿を消したアメティストスを探し旅に出たオルフが出会う この世のものならぬ事件と奴隷軍とアルカディア軍双方の様ざまの人々との関わり。 はたして オルフは失踪した閣下を探し当てる事が出来るのか?

…といったお話しになるはずだったのが 物語りは レスボス島を後にしたオルフの行方をほったらかしにして、いつの間にか今回は 爺さん二人組のエピソードになっているというカオスっぷりです。

其れでも、宜しいという お心の広い方は以下へ お進み下さいませ。




【蒼き月 金色の竪琴 / 第五夜 境界】 その2


最早、宵闇と言える時間は過ぎ去り 辺りを漆黒の闇が蔽っていた。 先程まで人が往来していた町並みは 朧に霞む月明かりの作りだす黒い影の中に沈み込み どの家も堅く扉を閉ざしている。

「ええぃ! 早く退かんか! 臭くて敵わぬ!!」

日没近くになって、ようやく人の住む街に辿り着き安堵したためか、あまりの空腹に意識を無くし倒れ伏していたミュロスは、突然 覆いかぶさって来た物が 奴らでは無かったことを神に感謝したが この老人の体臭が 奴らに負けず劣らず殺人的な悪臭だった事に悪態を吐かずにはいられなかった。


「まったく、何でこんな処に寝ているんだ? 此処は天下の往来だぞ! 少しは人の迷惑ってものを考えたらどうだ?」

そう言い返しながら ネストルは、なかなか立ち上がる事が出来なかった。 倒れた拍子に打った鼻っ柱はヒリヒリと痛み 鼻の下には生温かい濡れた感触が広がっている。 どうやら 鼻血が盛大に出ているらしい。 それに、この痛み具合からすると 鼻の骨も折れてしまったのかもしれない。 それなのに この爺ときたら偉そうに命令までして あまつさえ人様を生ごみ扱いか!? まさに踏んだり蹴ったりとは 此の事だ! それに、いくら私でも 爺と抱き合う趣味は無い。 まったく、こんな往来で 見も知らぬ汚らしい爺さんと抱き合っている様を誰かに見られたりしたら事だとばかりに 背負った荷物と絡まり合う手足に四苦八苦しながら ようやく身を離したネストルは ぶつくさ文句を言いながら半身を起こし きょろきょろと辺りを見回したが その心配が最早手遅れである事を知り愕然とした。

暗闇に紛れ 彼らの表情は読み取れないが いつの間にか 何やらくぐもったような笑い声を洩らす何人もの野次馬に取り囲まれていることに気付いたからだ。

「なんてことだ! こんな恥をかいたのは生まれて初めてだ! こう見えても 私ぱνεμον(アネモン)の神官ネストル様だぞ! 本来ならば貴様ら下賤な者どもが気安く近寄る事さえ叶わぬ…」

其処まで言いかけたところで ネストルはミュロスに口を塞がれてしまった。

「静かに…。 奴らを これ以上刺激するんじゃない! お前さんの血の匂いで奴らを招き寄せてしまったようだ」

ネストルは なんとかミュロスの手を退けようと試みたが 老人とは思えぬ力で口を塞がれ どうにも出来ない。 それどころか あまりに強く押さえられた所為で まともに息をする事さえかなわぬほどだ。 このままでは窒息死してしまうと思ったネストルだったが、もがいていた手から力が抜けてゆく事に気付き ミュロスが慌てて手を緩めた。

「こ・殺す気か!?」

「すまん、そんな気ではなかったのだが…」

「そんな気でやられたんッじゃ叶わぬわ!!」

ネストルは 一刻も早くこの場を立ち去りたいと思ったが 立ち上がろうとする自分の着物の裾を ミュロスがしっかりと掴み離そうとしない。

「どういう心算だ!?」

「まぁ、待て…。 どうも奴らの様子が変だ」

「奴ら…?」

其の時になって初めてネストルは 自分達を囲むモノ達の様子が 尋常の者共ではない事に気付いた。 僅かに降りそそぐ月光に眼を眇めて見れば、野次馬だと思っていたモノ達は ふらふらと風に揺れる枯れ草のように前後に揺れ動き、その眼には夜目にも見間違えの無い不気味な光りを湛え、奴らが洩らす声は 二人を嘲笑う嘲笑ではなく 聞いたことも無い地の底から響いてくるかの如き生ある者への呪詛の言葉であった。

「ななな・なんだ 奴らは!?」

「しーっ…! 奴らは この世のモノではない。 生きとし生けるものを 自分たちと同じ境遇に落とそうとする地の底から甦った呪われた死人共じゃ…」

「ふざけた事を言うな! そんな事があろうはずがないだろうが!?」

「そう思いたいのは わしも 山々なんじゃが、 ホレっ… お主も感じておるじゃろう、先刻から辺りに満ち満ちておる禍々しい空気を」

言われてみれば、息をするのも難しいほど濃度を増した瘴気が 肌を腐食するようにピリピリと感じられた。 これ程の瘴気を感じた事は未だかって無い。 いや、ただ一度だけの例外を除いては…、 其れは 難攻不落の城塞都市と謳われた風の都イーリオン陥落後 アルカディアの獅子王ことレオンティウスと 奴隷軍率いる紫眼の狼アメティストスとが激突し雌雄を決した時に 俄かに湧き起こった雷雲と暴風と稲光の中で感じた吐き気を催すほどの瘴気と同じモノだった。

その異常な濃度の瘴気の中 何故か奴らは一定の距離を保ったまま 近付いてこようとはせぬ。 ただ、不気味な呪詛の言葉を遠巻きに投げ掛けてくるだけだ。 中には 覚束ぬ足運びで一歩二歩と近付いてこようとするモノも有ったが、踏み出した足を何かに焼かれたように引っ込めてしまう。 見れば 奴らの足元には何やら青白く光る物が落ちているようだ。どうやら、其れを不用意に踏んで苦痛を感じているらしい。 死して後まで苦痛を与えるものとは…。

『「いったい何じゃ? あれは?」』

ミュロスとネストルは声を合わせたかのように 同じ言葉を同時に発した。

『「聞きたいのは、こっちじゃ!」』

またもや同じ言葉を口にした二人は げんなりした顔をお互いに見交わせて 思わず噴き出しそうになったが、そうも言っていられそうもない状況だと気付き 建物の壁を背にして 奴らと出来るだけ距離を取った。

「どうやら、あれは護符の様だな…」

言われてみれば 地面の所々に燃える青白い焔の中に ネストルが自らの手で(適当に)書きこんだ太陽神ヘリオスの紋章がぼんやりと浮かび上がっているのが見て取れる。 先程、転んだ拍子に 背中のズタ袋の破れ目から商売物の護符を撒き散らしてしまったらしい。

「奴らが恐れるのは 総てを浄化する焔と太陽の光りだ。 あれは、お前さんの物か?」

「たしかに、私の売り物の護符だが あんなものが…」

ネストルが そう言った途端に 今まで燃えていた護符の青白い焔が 風に吹き消されそうになる燈明のように消えそうに揺らめき、途端に奴らが包囲の輪を狭めて来た。

「ちょっと待った!」

其れを見て、ミュロスは慌てて言った。 

「あんなものとはなんだ? 現に奴らを退けるとまではいかなくとも 足止めくらいにはなって居るではないか。 もっと自分の商品に自信を持ったらどうだ!?」


言われてみれば、確かに 自分たち二人の周りに撒き散らされた護符が 奴らを近付く事を許さぬ結界を張り巡らされているように見えた。

「奴らが恐れるのは けして金ぴかの装飾に飾り立てられた神殿の権威などでは無い。 奴らが最も恐れるものは 運命に抗い生きようとする人間の強い意志と信仰の力だ」

「そんな物が、私の作った いい加減な護符に在るとでも言うのか?」

更に護符の焔は 勢いを弱め 今にも消えてしまいそうになり、奴らの腐り果てた異臭を放つ手が間近に迫った。

「だから、自信を持てと言っておる!」

そう叫んだミュロスが 迫り来る異形の者共から目を逸らし頭を抱え縮こまってしまったネストルの頬を思いっきり叩いた。

「イッテぇな! 糞爺ぃ!!」

途端に 消え入りそうになっていた護符の青白い焔が真っ赤に色を変え 轟ッ!っと音を立てて燃え上り 死人共は雷撃を受けた様に仰け反り動きを止めた。

なんて事だ! こんなはずじゃなかった。 私の欲しい物は 暖かな今晩の寝床と 一杯の葡萄酒と食事。

それがどうだ? 今や 訳のわからない事をほざく爺さんと一緒に、この世のモノではない得体の知れない物に囲まれて 折れた鼻っ柱から鼻血を流しているという体たらくだ。 ネストルはつくづく自分の運命を呪わずにはいられなかった。





【蒼き月 金色の竪琴 / 第五夜 境界】 その2 …… to be continued.

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