残念な時帰呼が綴る 残念な感じのON>OFF生活


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こんばんわ(^0_0^)

名古屋にひとりで遊びに行ってゴメンナサイの時帰呼です。

名古屋オクトーバーフェストのレポは 後日 必ず書きますので 気長に待っていて下さい。

さて、本日は 今月初めに アップしてから放置してあった【蒼き月 金色の竪琴 / 第五夜 境界】の最終話です。
ほんとうに、遅筆でゴメンナサイ。 気になっていたこのSSが ようやく書き終ったので、明日からは 夏コミ原稿に全力で取り組みますです。 ゴメンナサイ。 ← ああ、今日は謝ってばかりだな…;;;;;


内容は、ある街に辿り着いたミュロスと その街で商売人のまねごとをしていた元神官のネストルが巻き込まれる事件のお話です。

 そんなわけで、ちょっとばかり長いですが 宜しければ 以下へお進み下さい。





 【境界】その4


「そんなわけで、 まさに死の淵から冥府の底を覗き込むような状況から生還することができたのも 全ては この霊権あらたかな 護符が有ったればこそと言えるだろう!」

往来に広げられた布の上に 整然と並べられた護符を指し示し 大袈裟な身振り手振りを交えながら ネストルは 大声で口上を述べていた。

しかし、道行く人々は 足を止めることも無く おりからの猛暑から逃れるように 足早に行き過ぎてしまう。 中には ネストルの両脇に ちょこんと座り込んだ三人の子供達に目を止め 微笑みかける者もあったが、ネストルの胡散臭い微笑みと 彼の放つ臭気に辟易し 足早に立ち去ってしまった。

「ちっとも売れないね」

一番年上の子供ヘクトルが 屈託の無い笑顔をネストルへ向けて言った。

「こんな怪しいモノ、誰も買わないわよ」

三人の中で唯一の女の子カッサンドラが 身も蓋も無い事を言った。

「ええぃ! 怪しいモノとは何だ! お前達も その目で わしの護符の霊験あらたかな効力は 見たではないか!」

ネストルが喚くと 年下の男の子パリスが言った。

「そうだよ! 父ちゃんの護符は ほんとは凄いんだから!」

「私が いつ お前達の父ちゃんになった!?」

ネストルが 慌てて抗議したが その顔には 満更でもない表情が見て取れた。


(変われば変わるものだな…)

ミュロスは ネストル達が露店商のまね事をしている傍らの木陰から その様子を見守っていた。

降り注ぐ陽射しは 足元の影の色を濃くし 数カ月前の惨劇が 無かった事のようにさえ感じられたが、確かに あの夜の出来事が現実だと知らしめる三人の生き証人が目の前に居た。

それにしても よくぞ生き延びられたものだ。




これまでの人生で数多の戦場や数々の苦境を切り抜けてきたミュロスでさえ、あの夜の事を思い起こす度に、恐怖感が喉元までせり上がり この春先だというのに、地獄の釜の蓋が空いたような異常な陽気は あながち物の例えとばかり言えないのではないかと思え、吐き気をもよおさずにはいられなかった。


あの夜、始めのうちは、自分で頼んだにも係わらず、気休め程度かと思っていたネストルの祝福の呪文だったが、刃を一降りしただけで それが誤りであったと知った。

ネストルの不思議な呪文に祝福された黒き刃は 夜目にも はっきりと分かるほどに 青白い燐光を放ち、痛みを知らぬはずの死人は その刃に切られると もがき苦しみ 一瞬で土くれとなって崩れ落ちた。 それだけではない、その燐光を翳しただけで 亡者の群れは海がふたつに割れるようにして退いてゆくではないか!

いったい、あのネストルと名乗る男は 何者なのだ? 奴が言うように かつて名高い神殿に仕える神職にあったのだろうか?

それにしては、この剣に与えた祝福の呪文は まるで異民族達(バルバロイ)の言葉のような 聞き覚えの無い物だった。


だが今は、そんな事はどうでもよい。 ミュロスは 何十体もの死人を切り伏せ、漆黒の闇に染まる街中を駆け抜け、立ち並ぶ民家の幾つもの扉を開き、中に駆け込んだが、生きている人間は見出だせず、 あるのは動き回る死人と 無惨に引き裂かれ肉を喰われた死体ばかり。 しかも その被害者の死体でさえ 間を置かず生ける屍の仲間となって立ち上がってくるではないか。 まさに、地獄絵図とは、このこと!

半ば、生存者の存在を諦めかけていた その時、右手の民家の陰の小路から 悲鳴が聞こえ 三人の子供が転がるようにして駆け出し、その後を追い、グズグズに腐敗した死人が 手を延ばし 獣のような鉤爪で、今まさに子供らを捉えようとしているのが 目に入った。

一閃!

ミュロスの目にも留まらぬ斬撃に 死人の両手と首は切り落とされ 次の瞬間に 死人は腐敗臭を放つ土くれと化した。


「うわぁーん!」

子供らは 口々に泣き叫びながら ミュロスに取り縋ってきた。

どうやって この死人が徘徊する街を逃げ延びて来たのかは判らぬが この状況では、この子供達が この街最後の生き残りなのかも知れない。

「これこれ、もう大丈夫じゃ。そんなに抱き着くでない。 ここに居るのは、お前達だけか? 」

ミュロスが そう言うと 子供達は 素直に身を離すと ぶんぶんと首を振ったが、その手は しっかりとミュロスの外套の端を掴んだまま 離そうとはしない。

「ううん、分からない」

ミュロスの問いに、一番年長と思われる男の子が気丈に答え、他のふたりは涙を流しながら泣いていた。

「うぇぇーん!」


とにかく、この子供らだけでも 助けてやりたい。

「よいか? 離れずに ついて来るのじゃぞ!」

ミュロスは 子供達を守りながら もと来たと思われる方向へ駆け出した。

ネストルの待つ場所を見つけさえすれば、この苦境を切り抜けられるかもしれぬ。

だが、初めて訪れた街であるうえに この暗がりだ。 途中、方向を見失い、いったい どちらへ逃げれば良いのか 皆目見当がつかなくなってしまった。

街の至る所には 死人の群れが跋扈し 生きている者は 自分達だけのようだ、すでに死人の支配する街と化してしまったのだ。

ふと気付くと、手にした黒き刃に宿る破魔の力が弱まってきたのか、刀身の放つ光りは 今や微かに脈打つだけの弱いものとなっている。

子供らは 懸命について来ていたが ミュロスとて、幼い子供らを抱え いつまでも逃げおおせるとは思えない。

いざとなれば、子供等を死人どもの手にかけさせるくらいならば…と、ミュロスが覚悟を決めた時、ネストルの声が聞こえた。

「こっちじゃ!」


声の主を捜すと 少し離れた曲がり角から ネストルが手招きをしているのが見えた。 ミュロスは 何故だか その胡散臭い男の顔を見て 弱気になっていた自分が勇気づけられ嬉しく感じていることに気付き 苦笑いした。

「何をしておる! 早く!」

ネストルの急かす声に 子供達を連れて駆け寄ると言った。

「わしの言ったように 何故 あの場所でおとなしく待っていなかった!?迷子になっしまうぞ」

「何をいっておる! 迷子になっていたのは お前さんの方だろうが! それに なんだ そのお荷物は!?」

「そんな事を言い合っている暇は無いよ!」

年上の男の子が 話しに割って入った。

見ると すぐ背後まで 死人の群れが迫って来ている。

「えぇい! こっちじゃ! ついて来い!」

ネストルが そう叫ぶと、残りの四人は その後に続いて走り出した。

これも 何かの呪文か魔法の類の効力なのか? 曲がりくねり 複雑に入り組んだ暗い街路を 常人より夜目の効くミュロスでさえ 見通せないというのに、まるで猫のように ネストルは 全速力で駆けてゆく。

「待て! 待てと言うに! こちらは子供連れなんじゃぞ!」

だが、ネストルは さらに右に左に曲がりながら どんどん先へ走って行ってしまう。

ここは この男を信用して ついて行くしかあるまい。ミュロスは 剣を杖に仕舞い、小さな子供二人を小脇に抱え 年長の男の子に気を配りながら ネストルの後を追った。


しばらく 駆け続けて行くと 不意に ネストルが立ち止まり振り返って言った。

「おっと! 行き止まりじゃ!」

「なっ・なんじゃと!? お前は道を知っていたんじゃないのか!?」

「馬鹿を言うな! 初めて来た街の道を わしが知っているはずなかろう!」

なんて事だ! こんな男を信じた わしが馬鹿じゃった!

恐る恐る 後ろを振り返ると そこには夥しい死人の群れが迫り すでに逃げ場を失っている事を知った。


「どうするつもりじゃ!」

「人間、どうせ一度は死ぬんじゃ。諦めも肝心じゃぞ」

「このままでは、その人間でいられなくなってしまうんじゃぞ!それどころか、死ぬ事さえ…」


「…なぁんてな!」

わしが 食ってかかろうとすると ネストルは ズイッとわしらの前に出て 死人どもとの間に立って 笑いながら言った。

「ふざけた事を…!」


だが、ネストルは 笑顔を浮かべたまま続けた。

「今から ちょいとしたマジナイをするが、少々手間がかかるんでな…、 その間 ちょっと頑張って 死人達の相手をしていてくれないか?」

よく見ると ネストルの笑顔は歪み、脚はガクブルしている。 この男も 精一杯 勇気を振り絞って 理不尽な運命に立ち向かっているのだと気付いた。


「分かった、任せろ!」

わしが、再び剣を構えると、ネストルは 子供等を庇いながら 呪文の詠唱を始めた。

その呪文は たしかに権威ある神殿で唱えられる物に 似ていたが 所々にバルバロイの物と思える聞いた事もない呪文が交えられているようだ。

「なんじゃ? その妙な呪文は!?」

「ネストル様特製のカクテル呪文ってヤツじゃ! そんなことより、ホレッ! 来なすったぞ!」

ネストルの呪文に気を取られているうちに 死人が更に迫っていた。

『…金色の竪琴の紡ぎ出す清浄なる調べよ、闇を退け賜え!』

ネストルの詠唱を受け、わしの手にした剣が再び光りを放ち出し、死人達は、その光を浴びると怯えたように後ずさった。

ネストルの詠唱は更に続く。

『土は 土に、灰は 灰に、廻り廻る運命と輪廻の車輪よ!』

すると、ネストルの足元がボゥッと光り、そこから小さな光りの粒子がキラキラと舞い踊りながら四方にたなびき流れ出たかと思うと、まるで小さなつむじ風のようにクルクルと回転しだした。

それを見た子供達は、死人に囲まれている事も忘れ、顔を輝かせ、わしも又、子供達と同じように、その美しい光りに見とれていた。
それは、魂を亡くしたはずの死人達も同じだったのか、彼らも歩みを止め、虚ろな目を光りの渦に向けていた。

『天空にまします古しえの神よ、狩りと豊饒の女神の名のもとに蒼き月をもって、邪悪なる物を討ち滅ぼし浄化し賜え!』

ネストルが一際声を高め そう唱えると、光りの渦が 煌めく無数の矢となって 雷光のように放たれ、それが死人達の足元に突き刺さると そこに突然 焔の輪が立ち上がった。

そして その焔に触れた死人は 轟音を上げ松明のように一瞬にして燃え上がってしまい、その焔が 次々と死人に燃え移り あっという間に 目の前の死人の群れは 焔に包まれた。



「たいしたもんじゃ…、
だが、この焔では、この道を通り抜けられんぞ。 どうするつもりじゃ?」

わしが ボソリと呟くと、ネストルは サラリと言ってのけた。

「うむ…、そこまでは考えておらなんだ」





結局、わし達五人は、手近な扉を切り開き、死人の焔が延焼しだした建物や街路を駆け抜け、私の剣とネストルの呪文で 何度も死人の群れに囲まれながらも なんとか 死の街を脱出する事に成功したのは 翌朝 朝日が東の空に昇り その光りが ネストルの焔を逃れた残りの死人を 全て 焼き払った後だった。




あれから、数ヶ月。 あの死の街から助け出した子供等を引き連れた傍目には奇妙な一行は 不思議な一体感を感じながら旅を続けていた。

「今日も 商売は、さっぱりだったね」

カッサンドラが ズバリと言った。

「まぁ、こんな田舎では 私の護符の有り難さがわからんのだな」

ネストルが 苦笑いを浮かべ答える。

ヘクトルは商売道具の片付けを 黙々と手伝い、パリスは 夕日に舞う蜻蛉を追っている。


「なぁ、ひとつ聞いていいか? あの夜の呪文は なんだったんじゃ?」

神など信じぬとうそぶく元神官が 唱えた呪文は たしかに 月の女神アルテミスに捧げられたものだった。

「あれか? なぁに、たいした物じゃない…」

ネストルは 曖昧な笑みを漏らし 言葉を濁し、わしは、それ以上は 聞こうとはしなかった。 いずれ 話してくれる時も来るじゃろう。

今は、久しぶりに感じる人と人との温もりを ゆっくりと味わいたいとミュロスは思った。



「ねぇ ねぇ、父ちゃん! 蜻蛉 採って!」

パリスが、ネストルにねだる。

「だ・か・ら…!、私は お前らの父ちゃんじゃないと言っておろうが!」

「ケチケチすんなよ! 父ちゃん得意の呪文で パッっと採ってよ!」

「そんな呪文は無い!」

カッサンドラが からかって言った事は分かっていたが、不思議と腹は立たなかった。 それどころか、この子供らと一緒にいると 今まで感じた事の無い感情に包まれるのを ネストルは感じずにはいられなかったが、其れが何なのかは まるで判らなかった。

「それにしても…」

ヘクトルが ボソリと言った。

『「なんじゃ?」』

ミュロスとネストルが 振り向いて同時に言った。

「ふたりとも そっくりだね。 なんだか分からないけれど そんな気がするんだ。 急に父ちゃんがふたり出来たみたいな感じがするよ」

そのヘクトルの言葉に ミュロスとネストルは お互いの顔を見交わし、叫んだ。

『「どこが!? こんな奴と一緒にしてくれるな!!」』


またもや、同時に声を発したふたりは 苦笑いをすると、子供らの頭をなでると そっと引き寄せた。

夕日が 遠くの山々の稜線に沈みこもうとしている。 まだ、この街まで あの死人達の潜む闇は迫ってはいなかったが それ程の猶予も無い事をミュロスとネストルは知っていた。


「明朝早く 出立した方うがよさそうだ… 先を急ごう…」

ミュロスが そう言うと、ネストルは黙ってうなずき、今一度 子供たちを引き寄せ抱きしめた。

「どうしたんだよ? 父ちゃん」

少しばかり力が籠り過ぎていたのか、パリスが 戸惑って文句を言うと、ネストルは首を振って 「何でもない」と笑顔を浮かべて答えた。


ネストルは 燃え上がる夕日を見つめ思った。

ようやく、私の渇きを癒してくれる者たちに出会ったのかもしれないと…。




   【境界】…… 了






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