残念な時帰呼が綴る 残念な感じのON>OFF生活


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さらに【星屑】の続きです。 此処まで読んで下さった方にはお分かりでしょうが このお話しはスコピー⇒ミーシャの片思いのお話しです。


切ないストーリィに書き上げられたら本望です。





 【星屑】その7 


「剣呑、剣呑…、どうやら御婦人の部屋に 夜分長居をし過ぎたようです。宜しければ 帰り道を御教授願えますかな?」

「もちろん、道を教えて差し上げるのは良いけれど 複雑に立ち並ぶ夜の神殿を独りで歩くのでは、また迷ってしまうと思います。神殿の出口まで案内致しましょう」

「それは、有り難いのですが…」

アルギュロスが言い淀む。
「本当に 犬が苦手のようですね。 けれど、もうお気づきのように 私は眼が不自由なので この子の助けが無いと きっと二人共 迷子になってしまうわ」


アルギュロスは 何となく気付いていたが、先刻よりのミーシャの何もかも見通すような様子に 確信が持てないでいたのだ。

「有り難い、お手数をお掛けするがお願いする。 それにしても 不思議です、失礼ながら とても そのようには…」

ミーシャが月の明かりのように仄かに微笑んで言った。

「私には 見えるのです。 いえ、正確には 見えるように感じられるのです。
もちろん何もかもというわけにはいきませんが、風に触れれば風景が 物に触れれば その物の持ち主の姿が、見えるのです。
それは、この島の巫女が星を読み取り見る未来とは違う、言わば 現在と過去。
そう、レスボスを訪れる皆さんが求める明日への道標には 成りえないのが残念なのですが、それでも私はこの力を与えて下さった神に感謝を捧げるのです」

それは、アルギュロスが予想もしていなかった言葉だった。
確かに、レスボスには各国に神託を授けるという いわば超常的な役割が有るが、それはあくまでも神の名を騙る神職者のでっちあげの類いだと彼は思っていた。だが、ミーシャの言葉には 勿論そのような響きは微塵も感じられない。

それどころか、何の疑いも無くアルギュロスの心の中にミーシャの言葉が染み透って(彼らしくもなく)素直に信じられた。

アルギュロスは考えた。
無論、下らぬ世迷言を授ける馬鹿げた偽りの聖域だとしても この世界全域に影響を与えるレスボスの神域を いずれ全て掌握するのは勿論の事、それと同時に地中海世界全域の海上交通の要所であるレスボスの港を手に入れ、そこからもたらされる交易による莫大な利益と権益、そして戦略的重要拠点を 全て我が手にする心算であった。

だがしかし、ミーシャの力が 現実に有るとするならば、レスボスの星を読み未来を知るという力も実在するのではないだろうか?

過去、現在、未来を我が手にする。 それは まるで『神の視点』を手に入れるに等しい…

「アル、どうしたのですか?」

アルギュロスは ビクリとした。 今、私は どんな顔をしていたのだろうか? 汚れ無きという言葉が 彼女の為に有るのではないかと思える美しき乙女の前で…。 彼女の眼が見えぬ事を 彼は感謝せずにはいられなかった。

「いえ、なんでもありません。 長々とお邪魔をしてしまいました。 お願い出来れば 道案内を…」

ミーシャは アルの物言いを気にかけながらも プルーの背を軽く叩くと立ち上がって言った。

「プルー、お願い」

プルーは すっくと立ち上がり ミーシャが首輪に繋がれた赤い革紐を持つのを待った。

「さぁ、行きましょう」

黒銀のプルーを先頭に ミーシャとアルギュロスは 闇に包まれたレスボスの神殿の回廊を歩んで行った。 そこかしこに掲げられた常夜灯の松明、聖域を侵す者など居るはずもなく安心し切って眠りこけている不寝番の横を 息を潜めて通り抜ける。

それは、ミーシャにとってもアルギュロスにとっても、予期せぬ小さな冒険だった。


「此処まで来れば大丈夫です」

アルギュロスは、いつの間にか明けかけた東の空の太陽の光りを頬に受けながら ミーシャに礼を言った。

「お礼なら、プルーに」

「そうでしたな。ありがとう」

アルギュロスは 恐る恐るプルーの背に手を置き そっと撫でた。その身体は 何故か氷のように冷え切っていたが 気のせいだと思う事にした。

「ミーシャ…、叶うならば、また貴女の部屋を訪ねても良いだろうか?」

彼にしてみれば 有り得ないほど緊張しながら この言葉を告げた。まるで、思春期の少年のように…。

「勿論…、でも私は、貴方ほどの立場にある方の夜伽の相手とするには相応しくないと思いますよ」

「とんでもない!けして私は、そのような邪しまな…」

「フフフ、ごめんなさい。少しからかっただけ…」

そう言ったミーシャの笑顔が 遠き日のあの人の面影を彼に思い起こさせた。



……to be continued
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