残念な時帰呼が綴る 残念な感じのON>OFF生活


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めちゃくちゃ久しぶりで申し訳ありません。

最近、すっかり残業漬けの時帰呼です。

どうにもこうにも、疲れはてて 寝落ちばかりしている間に あっという間に時間は流れ去り、ブログを放置しっぱなし…(T^T)

これでは、ただ毎日 息をしているだけの無意味な生活になってしまいます。

そんなわけで、ほんの少しだけですが また文章を書いてみました。

本当に短いので 申し訳なさいっぱいで ごめんなさい。






【星屑】 その11




カラリッと乾いた音がした。
テーブルの上には革袋から取り出された数十本の細長い樫の棒が無造作に広げられている。

その内の一本を手に取るとオリオンは、目の高さに持ってきて目を細め ジッと その棒を見つめた。 三年も掛けて完璧に乾燥させた選りすぐりの木目の揃った材を 自らの手で丁寧に削り出したから そこらの武器職人が作った物よりも ずっと立派で歪みの無い矢を作れるだろう。

ふぅぅと溜め息…

あとはニカワを使って スコピーが苦労して手に入れてくれた東方のバルバロイが使うという黒い鏃を先端に取り付け 後部に矢羽根を付ければ完成だと言うのに オリオンの手は、そこで止まってしまった。

どうにも気乗りがしない…。 それと言うのも、先月の終わりにスコピーが姿を眩ませてしまったからだ。 いやいや、そんなことは今までにも何度もあったことだから 気にすることはない… どうせ他所の国へ行って 何かしらの悪巧み…、いや失礼!根回しをしているに違いないのだから。
そう…、気にすることなんて無いはずなんだ。 だと言うのに、何だろう? このどうしようもない不安感は…。

「今日は、仕事にならないな」

そう一言呟くとオリオンは、手にしていた作りかけの矢を 放り出し 部屋の片隅にある寝台の上に身を横たえた。
目を閉じ ふぅぅと深呼吸をすると 寝具に染み込んだ留守にしているこの部屋の主の匂いが肺の中いっぱいに充たされ 何とも言えない悲しい気分になってしまった。

不意に、頬をひと雫の涙が流れたが オリオンはすぐにそれを拭い去った。 誰が見ていると言うわけでもないが たかが中年の男一人が居ないぐらいで 泣いてしまうなんて 自分自身が恥ずかしくて仕方なかったからだ。

いつからこんな風になってしまったんだろう? 天涯孤独の身という境遇を嘆いたことなど 物心ついてから 一度として無かった筈だ…。 暖かい温もりなど 生涯縁の無いものだと思っていた。

そうだ、此れというのも 全部 彼奴のせいだ。 あの、妙に暗い紫色の瞳をした あのエレフセウスという少年奴隷の…。

自分自身の歳でさえ 判然とはしていなかったから 確かなことは言えないが、彼奴も俺と同じく太陽が影に覆われ 世界が闇に沈んだ日の朝に産まれたと言っていたから たぶん同い年なんだろう。

粗暴で むさ苦しい男が押し込められた奴隷小屋の中で 同じ年ごろの子供に出会った物珍しさも手伝ったのだろうが、彼奴が世界の不幸の全てを背負い込んだとでも言うような あんまりにも暗い目をしていたもんだから、 俺は(他人になんか構っていられないと思っていたというのに) あの家畜小屋以下の悪臭ふんぷんとした奴隷小屋で、止せば良いのに ついつい声を掛けてしまったんだ。

エレフの奴は身の上話を滔々と語るような奴ではなかったが 俺が何度も何度も気にかけて話しかけていると しばらくして重い口を開いた。 もっとも聞いたところで ありきたりの奴隷商人に幼い頃に拐われたという話だったのだけれど、俺は 奴が語る時の真っ黒な穴ボコのような瞳の暗い光に どういう訳だか すっかり魅せられてしまったんだ。

それからというもの、俺は ろくに石ころも運べないような ひょろひょろの彼奴を庇って 必要以上に奴隷監督官様の無知を… いや、失礼!鞭を有り難く頂戴する毎日になったって寸法だ。 ほんとう、俺って物好きだね。

まぁ、それも長くは続かなかったんだが…。 幸いにして 我が奴隷小屋担当の監督官様は お身体の虚弱な方が歴任されたようで エレフに手を出した翌日には 何故だかは知らないけれど急病に掛かって 即刻お亡くなりになったり 行方不明になったりしたものだから暫くすると監督官様も 我が愛しの奴隷小屋の様子など気に掛けず見廻りもしなくなっちまったんだな。

それにしても、彼奴… 今ごろ 何処で何をしているんだろう?

そんなことを思いながら 寝台に横になり天井を見上げている内に いつしか思考は一巡し どれ程待っても帰らぬ部屋の主の顔事をオリオンは思い出していた。



そうだな、もしかしたら スコピーに惹かれたのも その赤い瞳の色に隠された暗い光に魅せられてしまったのかもしれない… (なんてことあるわけ無いよな)

ああ、それにしても いったい何処をほっつき歩いてやがるんだ? あんたの安否など 実の親のデミュトリウス王でさえ気に掛けてなどいないというのに… 赤の他人の俺様が こんなに……。

オリオンは 両の掌を瞼の上にあてると 小刻みに身を震わせながら くぐもった声を漏らした。

押さえようもない空虚感… 抱き締められた肌の温もり、押さえ付けられた喉の感触…。 今この瞬間にくびり殺されたとしても なんの後悔も心残りも無いという充足感…。 其れが 得られるのならば、再び味わえるのならば、 何をも犠牲にしても構わぬ…、 何をも生け贄に捧げたとしても 罪悪感を感じる事などあり得ぬという確信。 それが、オリオンを突き動かしている衝動に他ならなかったのだ。


それに思い当たると オリオンは、瞼の上に当てていた掌を口に強く押て 再び声を漏らした。

だがそれは、親に見棄てられた幼子が泣くような弱々しい声ではなく 荒々しい岩山に響く風のような渇いた空虚な笑い声だ。

そう…、あんたが望むなら 中天に浮かぶ月をも射落としてやろう。 あんたが望むなら オリュンポスの山に住む
神々にも矢を向けよう。

もし、あんたが望むなら…

不意に開け放たれた部屋の扉が 音を立てた。 急いで起き上がったオリオンが首を廻らしたが、それは 吹き始めた夏の熱い風が扉を揺らしただけだった。

深くため息をひとつ吐いたオリオンが、青い瞳を開かれた扉の向こうに向けると そこには色濃く落ちた回廊の柱の影と紺碧の海の色を思わせる夏の蒼い空が広がっているだけだった。



……to be continued
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