残念な時帰呼が綴る 残念な感じのON>OFF生活


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今日は、字書きの時帰呼です。

昨年は なかなかブログも更新しなくて 、我ながら 情けないなと思っていたのですが、今年は、もう少し頑張っていこうと 新年の誓いを新たにしています。

そんなわけで、とりあえず 今年 一発目のSSでございます。

舞台は 幻想古代ギリシャ、
第六の地平線の救われなさでは No.1なのではないかと思われるキャラ= レオンティウスのお話です。

宜しければ 以下へと お進みくださいませ。






【夢】


「どうしたって かないやしない…」

レオンティウスは、まだ明けやらぬ東の空を見つめながら ぼそりと呟いた。

昨夜から ずっと机に向かい 書物を読み耽っていたものだから バキバキと音がするほど すっかりと硬直しきった肩と首筋を揉みほぐしながら ゆっくりと立ち上がり、 レオンティウスは 開け放たれた窓辺にもたれ掛かると 眼下に広がる街並みを見下ろした。

何処からともなく 起き出した人々が朝餉の仕度をする音が聞こえ、 街のあちこちから白い煙が立ち昇るのが見える。

今日も アルカディアの人々は 昨日と変わらぬ平穏な朝を迎えたようだ。

そう、其こそが寛容…。

レオンティウスは その歳には似合わぬ老成した言葉を吐くと それは、白い吐息となって 朝の冷たい空気の中に消えて行った。

暫し、物思いに沈んでいるかのように 身動きひとつしなかったレオンティウスだったが ふと眼下の街並みを見下ろし 朝靄に霞む通りを駆けて行く人影に気付いた。

それは、ようやくアルカディアの山際から差した朝の光りを受けキラキラと銀髪を煌めかせながら 町外れに向かい、 まるで一頭の駿馬のように駆けて行く見覚えのある男の後ろ姿だった。

自由、 其こそが 彼の名


私も、彼のように自由に生きられるものならば……

何度 レオンティウスは そう思ったことだろうか? 幼き頃より 一国の王となることを定められ、ありとあらゆる知識と武を身に付けるために 厳しく戒められ 教え込まれてきたのだ…、 ほんの少しの自由を味わう間など無く。

勿論、それは、彼の王としての品格と内実を形成するためだと 幼い頃から承知はしていたが、 同時に 彼の心の中にいびつな器を形成してしまったことには 、本人さえ 気付かずにいた。

『其コソガ 破滅ノハジマリ』

何処からか 暗き囁きが聞こえ、レオンティウスの耳を打つ。

(警告の心算か?)

レオンティウスは、その声に応える。

その陰鬱なる声が 自らの生み出した馬鹿げた妄想だと知りながら、 彼は いつしか 其れを友として話し掛けることを覚えた。

そう、彼にとって 心の底を見せることの出来るモノなど
“ソレ”以外に無かったのだから。

幼き頃より 忠臣カストルは よく付き従い 時に 誇り高き王族としての行く道を示唆してくれ、その他の家臣団もまた 年若き王子をもり立て 期待の目を向けてくれる。

だが、それが 彼 レオンティウスの孤独を より一層深いものにするのだ…。

今、上り始めた朝陽に赤く染まる雲の玄妙なる色合いを見つめながら 其の陰鬱なる感情を 彼は強く噛み締め ギリギリと噛み砕いた。

カタリ…ッと 背後で物音が……

「これは、驚かせてしまったかな?」

振り向くと 其処には 今しがた眼下の街並みを駆け抜けていったはずの彼の姿があった。

「あぁ、お前か……」

ぼうっとした徹夜明けの眼差しのまま レオンティウスは 彼に応えた。
見慣れたはずの愛する弟の顔は 視点が定まらぬせいか ぼんやりと霧の向こうに霞んでいるように判然としない。

「あぁ、お前か… とは ご挨拶だな。 兄上」

それでも 何故だか 彼が皮肉な笑みを浮かべていることだけは はっきりとわかる。

「すまない。 些か 睡眠不足のようだ」

レオンティウスは、こめかみを揉みしだきながら答えた。

「何もかも 一人で背負い込んでしまおうとするのが 兄上の 唯一の欠点だな。 それとも、相談役とまではいかなくても 愚痴を溢すことも出来ないほど、俺が頼りないと?」

今度は 彼の唇の片端が ひきつるように上がるのが はっきりと見てとれた。

とはいえ、複雑な気がしないでもないが こうして裏表なく接してくれる者など 彼以外には居ない。 陰謀術数渦巻く王宮の中にあっては そんな事さえ嬉しく感じてしまう。

「うむ…、だが お前に甘えるわけには…」

「何を言ってるんだ? たった二人きりの兄弟じゃないか…」

彼が 心底憤慨したという顔で 抗議をする。

…と、突然 二人の背後から 声がした。

「二人っきりって…、誰か お忘れじゃないの?」

其処には、レオンティウスたち二人の愛すべき美しき妹君が 腰に手をあて、これまた たいそう憤慨した面持ちで立っていた。

「やぁ、これは これは 本日も御機嫌 麗しゅう…」

レオンティウスの弟たる彼が おどけた様子で 深々と頭を垂れると 妹君は それに調子を合わせ 気取った仕草で そっと片手を差し出す。 すると彼は うやうやしく その手を取り 手の甲にキスをした。

「まったく…」

二人は この世に同時に生を受けた双子であるのだから 仕方の無いことだと思いつつも レオンティウスは、溜め息を
吐いた。 いつものことだが この二人の中の良さには 実の兄ながら 少なからず嫉妬せずにはいられない。

「そんな風だから 兄上は いつも眉間に皺を寄せていなくちゃいけないんだぜ」

「そうよ、それじゃあ まるで気難しがり屋の誰かさんみたいじゃない♪」

彼が皮肉を言うと、妹も 同じように 皮肉たっぷりに言った。

「義兄上を そんな風に言うのは 感心しないな…」

「ほら、それだ! 何故 そんな風に いつも いつもシャッチョコばった物言いしか出来ないんだ? 」

「シャッチョコばって…? そんな、バルバロイみたいな物言いも 王族たるもの…」

レオンティウスが そう言うと 彼が 肩を竦め 溜め息を吐いた。

「兄上は、いつまで 戦い続ける御積もりですか? 彼等とて 我々と同じ 切れば真っ赤な血を流す人間…。そして バルバロイだけではない、この国に囚われている奴隷達もまた どこも我々と変わらぬ同じ人間なのです。同じ人間同士が争い、いがみ合い、虐げる… その愚かさに気付かぬ兄上では ありますまい 」

彼の紫色の瞳が 色濃く暗い闇色に染まる。 それは、ついぞ 見かけたことの無い 不吉な光を帯びていた。

「……」

レオンティウスは 彼の名を 口にしようとして ふと気付いた。

「お前は 誰だ?」

そう、レオンティウスは 彼の名を知らない。 知るはずもない…。

何故なら…


「そうだ、ようやく 思イ 出しタようだナ」

今しがたまで レオンティウスの唯一心を許す弟であったはずのモノが 口を開くと、まるで暗黒の深淵に通じる井戸のような その奥底から 得たいの知れない無数の黒い影が蠢いているのが見えた。

「お前は…」

再び レオンティウスは そのモノに名を問い質そうとしたが その答えが返って来ることはないと知っていた。

「貴方ハ ヒドイひと…」

もうひとつの声に振り返る。そこには凍り付いた笑顔を張り付けた女が立っていた。

「そうだ、お前に出来ることナド 何モアリハしなイノダ…。 タダ、殺戮ヲ繰り返ス以外ニハ 」

皺枯れた声に 恐る恐る首を廻らすと よく見知った顔があった。

「義兄上…」

見る間に その顔は形を失い ゆるゆると別の顔を作り上げる。

「オ前ゴトキ軟弱モ者ニ 玉座ヲ渡シハセヌゾ」

「ち…、父上… !?」

そのモノは 鼻を突く異臭を放つ手を延ばすと レオンティウスの喉元を ガッシと捉え 所々 白い骨を覗かせた指をギリギリとくいこませる。

途端に 視界は暗く霞み レオンティウスの意識は 深く深く 沈んで行った…。



「……陛下……陛下!!」

肩口をガッシリとした手で掴まれ 強く揺さぶられる度に 腹に熱い鉛を流し込まれたような激痛が走る。 レオンティウスは うっすらと目を開くと そこにはカストルの髭面があった。

「陛下… お気を確かに!!」

カストルの了頬に 奴隷時代にも流したことがないと言い放っていた涙が 止めどなく滴り ついぞ見たことの無い表情を見せている。

「どうした? ……お前らしくもない……」

レオンティウスは 苦しい息の下から 忠臣に声を掛けたが 途端に その口から 夥しい血が吹き出し 喉を詰まらせた。

「あぁ、そうか……」


此処はイーリオン。難攻不落の城壁を要する城塞都市。

だが、それも 今は 奴隷軍という名の新たなる荒ぶる力に蹂躙されるに任され、紅蓮の焔に呑み込まれながら儚く消え去ろうとしていた。

そう、命ある者が滅せぬことの無いように、死する者が造り上げたモノが 永久に失われぬことなど 有りはしないのだ。 たとえ、それが どれ程堅牢にみえようとも、数多の贄の流した血に濡れた大地の上に築かれたモノならば なおのこと……

レオンティウスの流した鮮血は 大地に滴り落ち 赤黒い滲みを描いてゆく。

それは、彼が 夜の闇の中に……、

光り輝く白亜の王宮の陰に……、

水面に映る己の背後に何度となく見た あの黒い影を型どったかのような不気味な形に 大きく広がって逝く。

(嗚呼、私は、何を求めて来たのだろう……?)


天には黒雲が厚く覆い その狭間を稲光が煌めき、愚かな罪人に神罰を下さんとする雷神の鋭い槍のように走っていた。




【夢】…… 了
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