残念な時帰呼が綴る 残念な感じのON>OFF生活


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久し振りのSS……、というよりも もっと短いから SSSかな?






【イドの底】



丸く闇に縁取られた星空。

見上げる瞳は白濁した死者の其れ。

けれど、彼のモノの瞳には 無数に瞬く星々の煌めきが 確かに映っていた。

クスクスクス……。

傍らの緋色と黒の人形が押さえきれぬ笑いを漏らした。

「なにが そんなに可笑しいのだい? エリーゼ」

「ダッテ、可笑シインデスモノ」

彼女が 奇妙な響きを持った声で 応えにならない応えを返す。

彼女の声は 何故か何処か懐かしく、私の耳に響いた。

(思い出せない)

いつから、ふたりで此処に囚われていたのだろうか?

(囚われる……)

(誰に?)

此処には 私と 私の傍らに常に寄り添う彼女しか居ないというのに。

「復讐ヨ……」

彼女が囁く。

その言葉は 凍てついた氷のように私の胸の奥に するりと刺し込まれ 動かぬ心の臓を貫いた。

「復讐?」

「ソウ、復讐……。 其レガ ワタシト貴方ノ生キル意味」

(生きる?)

死者の私が?

(死者?)

私が 生きた記憶は いくら思い出そうとしても 霞の彼方に浮かぶ月のように朧に判然としないというのに。

はたして、

生きていた時……、温かい肌を持ち、湿った吐息を吐いていた時…、

ソンナモノガ あったのだろうか?

そんな時を生きたことがあるのだろうか?


見上げると 丸く縁取られた星空の向こう、何処とも知れぬ 闇の中に沈むモリの向こうで 獣が 細く長く 一声鳴いた。

「復讐………」

「ソウ、復讐ヨ」

彼女が 囁く。

コールタールの如く濃厚でドロリとした蜂蜜のように甘く 密やかな声で 彼女が囁く。

(ならば、始めよう!)

「さぁ! 復讐劇のハジマリだ!!」


「良イ子ネ」

再び 彼女が クスクスクスとほくそ笑みながら、 そう呟いた。

けれど、その言葉は 歪んだ微笑みを浮かべた【メルヒェン】の耳には もう届かない。



彼女は 笑う。

月の無い夜、草原を航る夜風のように

密やかに……、甘やかに……。


そして、


彼女は囁いた。

「此レガ、ワタシト アナタノ」


(モノガタリ)

丸く縁取られた星空の下、

暗く湿ったイドの底の闇の中に


もうひとつの声、

イドの底に沈む澱のように暗く淀んだ声が 響いた。


嗚呼、魔女が彼を生んだのか? 彼が魔女を生んだのか?

モノガタリの深意は イドの底よりも深く 深く……。



【イドの底】……了


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