残念な時帰呼が綴る 残念な感じのON>OFF生活


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おはようございます。

今日は 久々に書いたSSをアップさせていただきます。

とはいえ、季節外れのうえに まだ書きかけのハロウィンのお話しです。

舞台は アメリカの小さな街。 其処に住む レニーという名の少年が体験したハロウィンの一夜の物語り。

たぶん そんなに長いお話しにはならないとは思いますので、宜しければ 気長にお付き合いくだされば嬉しいです。








【おやすみレニー】その1


屋根裏部屋は 埃臭いし暗いから レニーは あまり好きではなかった。

ううん、あまりっていうのは ちょっと違うな。 ほんとは屋根裏の暗がりが怖くて仕方ない。 けど、今日ばかりは ガンバって探し物をしなくちゃいけないんだ。

二階の廊下の突き当たりに在る屋根裏部屋へと続く階段を見上げると 跳ね上げ戸の銅の取っ手が 怖じ気づいている彼を嘲るように鈍く光っていた。

「急がなくちゃ……」

レニーは、そう自分自身に言い聞かせながら 階段というよりも梯子と言った方が相応しいような急勾配の踏み板に手をかけた。

ギシリ……

途端に十歳になったばかりのレニーの体重が掛かっただけで 踏み板は頼り無げに軋んだが 構ってはいられない。 急がないと 町内の寄り合いからパパが帰って来てしまう。

いつも 屋根裏部屋は危ないから立ち入ってはいけないと きつくパパから言われているのに もし見つかったりしたら、きっと今晩のハロウィンに出掛けるのを禁じられてしまうだろう。

レニーは 恐る恐る跳ね上げ戸を押し上げ そっと屋根裏部屋の入り口から頭を出し 中の様子を窺った。

意外と広い三角の空間には 西の屋根の勾配に取り付けられた小さな窓から 暮れゆきつつある赤い西陽が斜めに射し込んでいて その中をきらきらと光る埃の粒が舞い踊っている。

(特に怪しいものは見当たらないな)

レニーは そんなの当たり前のことだと 自分の臆病さに呆れながら 隙無く目を配りながらゆっくりと屋根裏部屋に這い上がった。

目的の物が仕舞ってある場所の見当はついているつもりだったが 其れを見たのは もう数年前の事だ。
屋根裏部屋には レニーが着古した服や 遊び飽きた玩具が詰め込まれた箱が雑然と置かれ レニーの朧気な記憶では すぐには 其れを見つけられそうもない。

「ヤヴァイ ヤヴァイ」

悪友たちの乱暴な口調に いつの間にか毒されている事にも気付かぬほどレニーは焦りながら 大急ぎで がらくたの山をかき分け その向こうにある棚を目指した。 きっとあの辺りだったはずだ。

小一時間ほど 埃にまみれながら悪戦苦闘したレニーは 目的の物をようやく探しだした。 それは 大きめの旅行鞄で 持ち手に小さなタグが付けてあった。

『ハロウィン衣裳』

黄ばんだ紙のタグに記された筆跡が どうやらパパのものらしいことに あらためて気づいたレニーは 少しばかり驚いた。

(パパも 昔は お化けの真似をして 町中を歩き回ったのだろうか?)

(そんなの 当たり前だろ?)

何処からか からかうような声が聞こえたような気がして レニーは飛び上がりそうになった。

(臆病なのにも 程があるよ……)

今度は 間違いなく自分の胸の中からの声なのに安堵しつつ、レニーは そっと旅行鞄を開けてみた。
幸い鍵は掛かっていない。 どうやら僕がこの鞄に興味を持っていたのに パパは気付いていなかったようだ。


長年使われていなかった鞄の革は少々黴っぽくて 所々白く変色していたが 中の物は つい昨日仕舞い込まれたように キチンと畳まれていた。

そこにあったのは 黒い布と黒い大きな帽子。 レニーは そっと其の布の片端をつまみ上げてみた。

あれれ? 困ったぞ……。

その黒い布は どうやら魔女の衣裳のようだ。 いくらなんでも 魔女の格好なんて出来るわけない。 そんなことしたら ジョニーに何て言われるか…… 。 これなら 去年 衣裳が無くて仕方なくやったトイレットペーパーを巻き付けたミイラ男の方がマシじゃないか!

どうしよう?

旅行鞄の中の衣裳のあてが外れて途方に暮れていたレニーは、ふと 黒い衣装の下に 見覚えの無い白い布が有るのに気づいた。

これはなんだろう? と それを引っ張り出そうとした時、階下でドアの開く音がした。

「ただいまレニー、何処だ?」

大変だ! パパが帰ってきたんだ!


レニーは慌てて旅行鞄から離れると 急いで跳ね上げ戸をくぐり抜け 階段を転がり落ちるように下り、パパが居る玄関ホールを避けて二階の北の端にある外階段から 裏庭へ脱け出した。

「レニー?」

少しばかり苛立ったようなパパが呼ぶ声が 二階の窓から聞こえてくる。もしかしたら屋根裏部屋に立ち入ったことがバレたのかもしれない。捕まったりしたら 一巻の終り。

レニーは なるべく足音を立てないようにして 裏庭の木戸を開け 宵闇迫る路地を走り抜けて行った。


冬が近づく夕陽に赤く染まる路地は、見る間に建ち並ぶ家々の影と宵闇の薄絹に覆われてゆく。 駆け足のレニーの歩調が鈍り脚を止めたのは 大きなショーウインドウの在る雑貨屋の店先だった。

バクバクと脈打つ心臓を右手で押さえ、静まれ 静まれ!と言い聞かせる。

(どうしても こんなに言うことを聞いてくれないんだ、僕の心臓は……!)

小さく毒づくと レニーの胸の中の壊れかけのポンプが(オレダッテ頑張ッテンダ!!)とばかりに 不平を垂れるように 不整脈を打ち、きゅうぅっとした鈍い痛みに顔を顰めレニーは踞ってしまった。


冬枯れの街路樹から落ちた枯れ葉が カサカサと北風に足元に吹き寄せられ レニーを埋めてしまおうと 誰かが画策しているように思えた。

(負けるもんか)

レニーは、ふうぅっと息を吐き出し、 冷たい空気を温めるように ゆっくりと吸い込む。
何度も 何度も、ゆっくり ゆっくりと繰り返すうちに 言うことを聞かない彼の心臓も 渋々ながらおとなしく いつもの自分の仕事を思いだしたように規則正しく脈打ち出した。

「いつものことさ……」

レニーは、小さく呟くと 顔を上げた。目の前には ショーウインドウに映った青ざめた自分の顔。

( ひどい顔、まるでお化けじゃないか。こんなんじゃ ハロウィンの衣装なんて必要ないくらいだ)

こんな顔を 友達の皆に見せたら パパじゃないけど 心配されて ハロウィンのパレードへの参加をやめて家へ帰れと言われちゃうだろう。

レニーは、手にしたハロウィン衣装に目を落とす。 それは 古ぼけ薄汚れた(元は白かったはずの)灰色のシーツだった。

(なんてことだ!? シーツだって?)

驚き毒づくと また彼の心臓が 小さく踊った。

きゅんっとした小さな痛み。

ふうっと ゆっくり息を吸う。

いつものおまじないの儀式が 彼の心臓を宥める。

どうしようもない。今更 家へ帰っても 替わりの衣装は無いし、パパに見つかったら 今夜は二度と外に出してくれなくなっちゃうだろう。

仕方なく レニーは、そのシーツを頭からすっぽりと被ってみた。
すると そのシーツには穴が三つ開けられていて 不細工ながらお化けの不気味な顔が作られている。どうやら このシーツは 不器用なパパの子供の頃の手作りらしい。

すっかりと夕闇に覆われた路地に街路灯が 仄かな光を投げ掛け、レニーを背後から照らしている。
ショーウインドウに映った自分の姿を見て レニーはびくりと飛び上がりそうになった。

それは、やっつけ感満載のシーツのお化けに驚いたからじゃない。
シーツのお化けの後ろに立つ 見知らぬ男の姿に気づいたからだった。




【おやすみレニー】……to be continued.
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