残念な時帰呼が綴る 残念な感じのON>OFF生活


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夜の闇を漆黒の外套のように纏い 衝動は奔り出す。

抑えきれない想いと 消え去ることのない恨みと 忘れ去った記憶に突き動かされて。

たとえ、ひとならざるモノ、移ろわざるモノ、永遠に死せるモノと成り果てても。

見上げれば丸い蒼月。付き従うは、哀れなる骸を見下ろす輝ける星々。 微かに聞こえるは闇の囁く聲。

「さぁ、唄ってごらん」

其れは 確かに そう囁いた。




聲が聴こえる…。
子供たちの唄う聲が…。

ラ・ラ ラ ラ・ララ ラララ♪

ラ・ラ ラ ラ・ララ ラララ♪

今宵は ハロウィンナイト。
病に倒れ 或は 不慮の死を遂げ 地に伏し腐り果てた骸も起き上がり 建ち並ぶ家々の陰の中を さ迷い歩く逢魔の夜。

「クスクス…、ソンナニナッテモ マダ覚ェテルノ?」

何処か聞き覚えのある ぞわりと背筋を逆撫でる悪寒をともなう少女の聲が 耳元で そっと囁いた。


《陰を纏うモノ》は、不意に揺り起こされたように眼を見開く。

先程から聴こえていた 楽しげに唄う子供たちの聲が 風にのり 遠くに 近くに 微かに聴こえる。

《陰を纏うモノ》
は 首をかしげ、じっと耳を澄ます。

(あぁ、あの聲について行けば…)

何処へ…?

思い出せない。
けれど、その渇望だけは 今も 冷えきった胸を焼き焦がす。

ズキリ…と痛む右膝を忌々しく思いながら 彼は天を仰ぎ けして癒えることのない疼痛を堪える。

皮肉なものだ。 このような身の上になろうとも この傷みは逃れることを赦さないとは。

永遠に夜を さ迷うモノ。二度と暁を迎えられぬモノ。

それが 今の私。

だが、その私という存在が 何者であったのかを どうしても思い出せない。

私の名前…。

シェイマス だか ウィリアムだか…。

それとも……、

ズキリッ…と 膝が痛む。



あまりの痛みに顔を顰め 《陰を纏うモノ》 は 踞りそうになる。 けれど、こうしている間にも あの子供たちの聲が 遠ざかってゆく。

歯を食い縛り 無理矢理 歩を進める。
こんな痛みに構ってなどいられはしない。

遠く、遠く 子供たちの聲が聞こえる。



「ねぇ、あのお月様…」

先程とは違う少女の聲が 耳許で囁いた。

「ねぇ、お願い!」

《陰を纏うモノ》は、その聲に頷くと 虚空に輝く真ん丸な月に 手を伸ばす。

(けして、届くことなどないと知りながら)

「ずっと 一緒にいようね」

先程の聲が、声が、こえが… コェ ガ…

何度も 何度も繰り返される悲劇。
いや、天空に座する奴らからすれば 喜劇なのだろうか。

どちらにせよ、死せる運命にある憐れなるモノには 窺い知ることも 抗うことも許されぬ円環の理の内にある舞台劇にしかすぎないのだろう。

不意に ズシリと重さを増した両の手を 見下ろすと そこに握られていたのは 月光を鈍く反射する黒き双剣。

その切先からは 鮮紅の雫が 止めどなく滴り落ちている。



ラ・ラ ラ ラ・ララ ラララ♪

ラ・ラ ラ ラ・ララ ラララ♪

聲が聴こえる…。
子供たちの唄う聲が…。


遠く、近く、無邪気な子供たちの聲が 微かに風に乗って。


《陰を纏うモノ》は、痛む膝が軋むように ぎこちなく一歩前へと踏み出すと、歪んだ微笑を浮かべて そっと囁いた。

「サァ、復讐劇ヲ ハジメヨゥ…」


一陣の夜風が吹き抜け 子供たちの聲を掻き消した。


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